ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
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2017年09月号掲載
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呑むなら週3~4回のワインかビール!?
週3~4回の適度な飲酒で糖尿病リスクが低下する

「Diabetologia」7月27日オンライン版に、酒呑みにはなんともうれしい研究報告がなされましたので、ご紹介いたします。

適度な量のワインやビールを週に3~4回飲む人は、飲酒の頻度が週1回の人と比べて2型糖尿病リスクが約30%低下する可能性のあることが、デンマークの研究で報告された。

南デンマーク大学国立公衆衛生研究所教授のJanne Tolstrup氏らが行ったこの研究では、2007~2008年のデンマーク健康調査に参加した成人7万6,484人(うち男性は2万8,704人)を対象に、飲酒習慣や健康状態を尋ねた後、2012年まで(中央値4.9年)追跡して糖尿病発症との関連を調べた。

追跡期間中に男性では859人、女性では887人が2型糖尿病を発症した。解析の結果、飲酒習慣が全くない人と比べて、男性では週に14杯、女性では週9杯飲酒をする人で最も2型糖尿病リスクが低いことが分かった(リスク低下率はそれぞれ43%、58%)。

また、飲酒の頻度が「週に1日未満」の人と比べて、「週に3~4日」の人では2型糖尿病リスクが男性では27%、女性では32%低下しており、リスクの低減には「飲酒の頻度」も影響することが明らかにされた。Tolstrup氏は「2型糖尿病リスクを下げるには、1週間の総飲酒量にかかわらず、1度に飲むのではなく数回に分けて飲む方がよいようだ」と述べている。

さらに、飲酒による糖尿病リスクの低減効果は、アルコールの中でも「ワイン」が最も高く、男女ともに週に7杯以上飲む人では、週に1杯未満の人と比べて2型糖尿病リスクは最大で30%低下した。また、「ビール」による有益性は女性では認められなかったが、男性では週に1~6杯飲む人において、週に1杯未満の人と比べて2型糖尿病リスクが21%低かった。

なお、こうした飲酒による有益性はワインとビールに限られおり、ウイスキーやブランデーなどの「蒸留酒」については、男性では飲酒による糖尿病リスクの低減効果は認められず、女性では週に7杯以上飲むと2型糖尿病リスクは逆に83%高まっていた。今回の結果について、専門家の1人で米メイヨークリニックのAdrian Vella氏は「今回の研究では飲酒と糖尿病リスクとの関 連が示されたに過ぎず、これを根拠に2型糖尿病予防のために飲酒量を増やすことは推奨されない」と強調。研究の限界点として、飲酒量が参加者の自己申告によるものである点、2型糖尿病リスクの低下に影響するその他の因子(運動習慣や家族歴など)を考慮していない点、観察期間が5年と短かった点を挙げている。

Tolstrup氏も今回の研究は観察研究であり、両者の因果関係は証明されていない点を認めているが、「これまでの研究で、飲酒によりインスリン感受性が高まることや空腹時のインスリン抵抗性が改善する可能性が示唆されており、これが糖尿病の進行抑制に重要な役割を果たしていることも考えられる」と述べている。

原著論文:Holst C, et al. Diabetologia. 2017 Jul 27. [Epub ahead of print]

飲酒による健康増進作用については、フランス人は高脂肪食にもかかわらずワインを呑むことで循環器系の病気が少ないという、いわゆるフレンチパラドックスが有名ですが、このような研究結果がどんどん示されることを期待しております。

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