2018年05月号掲載
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歯磨きでがん予防
名古屋大学予防医学教室から「1日1回以下の歯磨きが頭頚部がんリスクになる」という報告がなされました。
日本歯科医師会の会員本人2万455人の追跡調査で、平均年齢は51.8歳、追跡期間は平均9.5年。観察期間に発症した頭頚部がんは62例で、内訳は食道がん41例、咽頭がん10例、口腔がん7例、舌がん4例でした。
今回の解析で、1日の歯磨き回数が2回に対して、1回以下が有意差をもって頭頚部がんになりやすいという結果が得られました。
年齢、性別(男性>女性)、喫煙、飲酒が頭頚部がんのリスク因子としてはっきりしており、今回はそれらを考慮しての検討結果であり、歯磨きによる口内環境が頭頚部がんの発症に関連していることが示唆されました。
成人の口腔内には300~700種類の細菌が生息しており、虫歯や口臭だけでなく、全身疾患との関係が注目されています。頭頚部がんだけでなく、すい臓がんや大腸がんといった口腔とは直接連続していない部位のがんや、心筋梗塞と口内細菌の関連を示唆する報告もあります。
口腔内は唾液の殺菌能で清浄に保たれるように出来ていますが、年齢とともに唾液の分泌は少なくなるため口内細菌は増えやすくなります。高齢者ほど口腔のケアが重要です。
日本で最初に歯磨きの重要性を訴えたのは道元禅師で、正法眼蔵の中で、修行者への歯磨きの作法を説いています。
- 楊枝をよくかみて、歯の上、歯の裏を磨くがごとく洗うべし
- たびたび磨いて洗いすすぐべし。歯のもとの肉の上もよく磨き洗うべし
- 歯の間もよく掻いて清らかに洗うべし
- 口を漱ぐことをたびたびすれは、漱ぎ浄められる
- その後、舌をこそぎ洗うべし
なんと歯だけでなく歯茎まで、今で言う「歯周病」予防にまで言及されています。
道元禅師は宋に渡って修行されたときに、修行僧たちの口臭が強いことに不快を覚え、歯磨きを徹底するようになったそうです。
私もどんなに酔って帰っても、必ず歯磨きをしてから寝るよう、修行しております。
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