肺がん検診について
杉並区の肺がん検診において、40代女性の肺がんの見落としがあったことが報道されました。 目黒区民検診が行われている時期でもあり、ご不安におもわれている方も多いかとおもわれます。
今回の事例は、正確には見落としではなく、誤診というべきものですが、経緯を簡単にご説明いたします。
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2014年の胸部X線検査において、第1読影医のA医師(内科)は右肺に腫瘤を指摘し、「異常あり」と診断するも、第2読影医のB医師(放射線科)は「乳頭の影であり、異常なし」と診断。第1読影医のA医師も、専門医であるB医師の診断「異常なし」を最終診断とした。
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2015年、第1読影医のC医師(内科)、第2読影医B医師とともに、前年の画像と比較して変化がないと考え、「異常なし」と判断した。
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2018年1月、第1読影医のD医師(内科)が、2015年に確認された腫瘤影の所見が改善したと判断し、「異常なし」と判定。第2読影医のE医師(内科)は、第1読影医の判定を参考に、最終判定を「異常なし」とした。
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2018年4月、呼吸困難などの症状で他の医療機関を受診し、胸部単純CT画像から右下葉の異常陰影の指摘される。
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5月上旬には脳梗塞を発症。5月下旬に肺腺癌と確定診断され、6月下旬に死亡。
肺がんが判明してから、2014年の胸部X線検査のレントゲンを見直したところ、右肺の腫瘤は乳頭ではなく、肺がん(腺癌)だった、ということがわかったのですが、不運な条件が重なったとはいえ、病変の存在ははじめからわかっていただけに、たいへん悔やまれる事例です。
女性の場合は乳頭の影が肺に重なって写ってしまうことは珍しくなく、肺がんなどの病変と見分けがつかない場合もしばしばです。
当院では、乳頭の可能性が高い影があった場合【Fig.1(病変拡大Fig.2)】には、乳頭部にご自身で金属クリップを張り付けていただいて再撮影【Fig.3(病変拡大Fig.4)】して、2枚のフィルムを比較して、影が乳頭に一致することを確認しています。
なお、「目黒区肺がん検診」では、1次、2次、3次の3段階の読影診断を行っています。読影診断は過去のX線フィルムと比較しながら行います。
まず当院で胸部X線検査を実施し、『1次読影』を行います。
肺がんを疑う「異常あり」と判定した場合と、異常がなくても、喫煙歴がある方、血縁者に肺がんの患者がいる方、咳や痰、胸の痛みが続く方などのレントゲンフィルムは区が回収して、呼吸器を専門とする医師による『2次読影』を行います。
1次読影、2次読影とも、「異常なし(肺がんの可能性なし)」の診断であれば、この時点で「異常なし」と判定します。
1次読影、2次読影のどちらかでも、肺がんを疑う「異常あり」の診断であれば、フィルムは『3次読影』に回されます。
3次読影は、月2回、東邦大学、国立がん研究センターから専門医を招へいし、1次、2次読影医を交え、医師会館においてディスカッション形式で読影をして、最終診断を行います。
ここで、「異常あり」の場合には、1次読影実施医療機関(当院)から受診者にご連絡をして、CT検査などの精密検査をおこなっていただくことになります。
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