ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2020年06月号掲載
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トイレは命がけ
うんこテストの結果より

新型コロナウイルス感染者の便中ウイルス量が、呼吸器検体より多く検出されたという報告がありました。

※中国・浙江省の医療機関に入院した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者96例(軽症22例、重症74例)を対象に、流行初期4カ月間の感染者のウイルス量を後ろ向きコホート研究で評価した。

患者が排泄した便から空中に菌やウイルスが飛散し、トイレを共用する学校、職場、家庭での感染拡大の原因になっていることは、感染性胃腸炎では常識ですが、コロナウイルスにおいてもその可能性がある、ということです。

院内感染の調査事例からも、共用トイレの危険性は以前から指摘されており、当院でも使用時以外のドアの開放と換気扇の常時稼働、そして座位顔面の高さに扇風機の設置を行っています。

トイレのドアノブ、便座の上げ下げ、水栓、ウォシュレットのスイッチ、そしてペーパーによる清拭など、トイレでの排泄には手指へのウイルス接触機会がたくさんあり、ウイルスの付着したその手指で泌尿器、肛門の粘膜に触れるのは危険です。

さらに、他人が排泄した便から飛散したウイルスを吸入するリスクもあるとなれば、トイレも命がけです。

というわけで、

  1. トイレに行く前には手指をよく洗うこと。
  2. 便座や水栓、ウォシュレットを操作する手と、お尻を拭く手をそれぞれ決めて、左右使い分けること。
  3. トイレは個室だからと気を抜かず、マスクは外さない、なるべく息をしない、(匂いは我慢で)鼻呼吸。
  4. 自分からウイルスを拡散させないために、お尻を上げず座ったまま(お尻で便器を蓋したまま)で水を流す(普段は自分の便を確認しましょう、と申し上げていますが)。便器に汚れが残っていないことだけ確認したら、すぐ蓋をして、もう一度水洗する。
  5. トイレの換気扇は常時稼働させ、ドアもできるだけ開放しておきましょう。

対象患者から呼吸器、便、血清、尿の検体計3497検体を採取し、便検体59%、血清検体41%からRNAが検出された。尿検体がSARS-CoV-2陽性だったのは1例のみだった。

ウイルス持続期間中央値は、便検体(22日、四分位範囲17-31日)の方が呼吸器検体(18日、13-29日、P=0.02)、血清検体(16日、11-21日、P<0.001)よりも有意に長く、重症患者の呼吸器検体(21日、14-30日)の方が軽症患者(14日、10-21日、P=0.04)よりも有意に長かった。呼吸器検体ウイルス量のピークは、軽度例では発症から2週目だったが、重度例では3週目もウイルス量が高値を維持した。ウイルス持続時間は、60歳以上の患者および男性患者の方が長かった。

(原著)Viral load dynamics and disease severity in patients infected with SARS-CoV-2 in Zhejiang province, China, January-March 2020: retrospective cohort study

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