ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
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2020年12月号掲載
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コーヒー + パン の朝食がメタボ抑制?
京都府立医科大学の研究報告より

朝食にコーヒーとパンを食べるという人は少なくないだろう。意外なことに、それがメタボリックシンドロームの抑制につながっているかもしれない。その可能性を示唆する、京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らの研究結果が、「Nutrients」に10月11日掲載された。

小山氏らはこの研究に、10万人以上の健康な一般住民を20年間追跡し、生活習慣や遺伝的背景と疾患リスクとの関連を調査している「J-MICC STUDY(日本多施設共同コーホート研究)」のデータを用いた。J-MICC STUDYの参加者のうち京都で登録された3,539人(男性1,239人と女性2,300人)を対象とするアンケートで、コーヒーと緑茶の1日の摂取頻度と、朝食にパンを食べるか否かを答えてもらった。

解析対象者は、年齢が57.6±10.1歳で、BMI22.2±3.24、内臓脂肪面積61.5±32.7cm2であり、15.7%がメタボリックシンドローム(Met-S)に該当した。コーヒー摂取頻度は、1日1回未満が28.0%、1日1回が28.2%、1日2回以上が43.8%、緑茶は同順に50.6%、15.1%、34.2%であり、朝食にパンを毎日食べるという人が41.6%を占めていた。

まず、コーヒーや緑茶の摂取回数と、BMIおよび内臓脂肪面積との関連を、年齢、性別、喫煙・飲酒・身体活動量、睡眠時間、高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物治療の有無で調整し、重回帰分析を行った。その結果、コーヒー摂取回数が多いほど内臓脂肪面積が小さいという有意な逆相関が認められた(β=-1.652、P<0.001)。

コーヒー摂取回数とBMI、緑茶の摂取回数と内臓脂肪面積およびBMIの間には、有意な相関はなかった。

次に、コーヒーまたは緑茶の摂取頻度がそれぞれ1日1回未満の人を基準として、1日に1回以上飲む人が、肥満(BMI25以上)、内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm2以上)、Met-Sに該当する割合を、前記同様の因子で調整後に比較。すると、コーヒーを1日1回以上飲む人は、内臓脂肪型肥満のオッズ比(OR)は0.746、Met-SのORは0.706であり、有意に有病率が低いことが明らかになった。ただし、肥満の有病率には有意な影響がみられなかった。また緑茶の摂取回数は、肥満、内臓脂肪型肥満、Met-Sのいずれの有病率にも、有意な影響を及ぼしていなかった。

続いて、朝食にパンを食べるという習慣を追加して検討。その結果、1日1回以上のコーヒー+朝食にパンを食べる人(1,172人)は、肥満のOR0.613、内臓脂肪型肥満のOR0.549、Met-SのOR0.586であり、全ての有病率が有意に低かった。また、1日1回以上の緑茶+朝食にパンを食べる人(730人)も、肥満のOR0.645、Met-SのOR0.659であり、有意に低かった(内臓脂肪型肥満については非有意)。

以上の結果をまとめると、コーヒー摂取回数が多いほど内臓脂肪面積が小さくなり、1日1回以上のコーヒーの摂取習慣のある人では、内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率が低いことが明らかになった。さらに、コーヒー摂取に加え朝食にパンを食べる人では、内臓脂肪型肥満やMet-S有病率がより低かった。

このような関連の背景として著者らは、コーヒーにはエネルギー消費を増やす作用が報告されていることや、朝食にパンを食べるとそれに合わせてコーヒーを飲む機会が増える可能性があるといった考察を加えている。ただし今回の検討では、朝食でのパンの摂取とコーヒーの摂取回数に有意な交互作用がなく、それぞれが独立して内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率に影響を及ぼしていた。

研究グループは、本研究が横断研究のために因果関係には言及できず、また、コーヒーや緑茶、パンの摂取量を自己申告による摂取回数で判断しており精度が十分ではない可能性に触れている。加えて、摂取されているパンを、肥満を来しにくい全粒粉パンか否か区別していないことも、限界点の一つに挙げている。その上で、「1日1回以上のコーヒーの摂取と朝食時にパンを食べることの組み合わせは、少なくとも内臓脂肪型肥満とメタボリックシンドロームの有病率が低いことと関連している」と結論づけている。

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