ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2021年05月号掲載
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新型コロナウィルスワクチン
私は接種できるの?

目黒区では5月上旬から75歳以上の方を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種が始まる予定で、4月19日より順次接種券の配布が始まる模様です。(目黒区HPより) かかりつけの患者さんからは、自分は接種できるのか?受けた方がいいのか?というご質問が増えています。 新型コロナウイルスワクチン接種に関しては、十分な検証が行われずに始まってしまったので、まだわからないことだらけで、私も(誰も?)自信をもってお答えすることはできません。 厚生労働省のHPには、ワクチン製造元のファイザー社の説明書が掲載されていますので、ご紹介しながら、私の意見を補足します。

予防接種を受けることができない人

下記にあてはまる方は本ワクチンを接種できません。該当すると思われる場合、必ず接種前の診察時に医師へ伝えてください。

  • 明らかに発熱している人(※1)
  • 重い急性疾患にかかっている人
  • 本ワクチンの成分に対し重度の過敏症(※2)の既往歴のある人
  • 上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある人 (※1)明らかな発熱とは通常 37.5℃以上を指します。ただし、37.5℃を下回る場合も平時の体温を鑑みて発熱と判断される場合はこの限りではありません。 (※2)アナフィラキシーや、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下等、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状。

明らかな発熱の人は、新型コロナウイルス感染の可能があるので、接種会場に行ってはいけませんし、重い急性疾患の方は予防接種よりも疾患の治療を優先すべきですので、この2項目に関しては特にご説明は要らないとおもいます。 問題は、ワクチンの成分についての過敏症の既往です。

本剤には、下記の成分が含まれています。

有効成分

  • トジナメラン(ヒトの細胞膜に結合する働きを持つスパイクタンパク質の全長体をコードする mRNA)

添加物

  • ALC-0315:[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカン酸エステル)
  • ALC-0159:2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド
  • DSPC:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
  • コレステロール
  • 塩化カリウム
  • リン酸二水素カリウム
  • 塩化ナトリウム
  • リン酸水素ナトリウム二水和物
  • 精製白糖

との記載がありますが、さて、塩化ナトリウムと精製白糖以外の成分がどんなものか?更にそれらに重度の過敏症があるかわかりますか?そして塩と砂糖に過敏症のある方はいらっしゃいますか? 最後の「上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある人」とは、具体的にどんな状態の人なのでしょう? これらを接種前に医師に伝えろ、というのはナンセンスですよね。 結局のところ、熱がなく通常の体調で接種会場に行ける方は接種可能、と判断するしかありません。

予防接種を受けるに当たり注意が必要な人

下記にあてはまる方は本ワクチンの接種について、注意が必要です。該当すると思われる場合は、必ず接種前の診察時に医師へ伝えてください。

  • 抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害のある人
  • 過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる人
  • 心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある人
  • 過去に予防接種を受けて、接種後 2 日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた人
  • 過去にけいれんを起こしたことがある人
  • 本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある人

妊娠中、又は妊娠している可能性がある人、授乳されている人は、接種前の診察時に必ず医師へ伝えてください。

本剤には、これまでのワクチンでは使用されたことのない添加剤が含まれています。過去に、薬剤で過敏症やアレルギーを起こしたことのある人は、接種前の診察時に必ず医師へ伝えてください。

次に悩ましいのは、注意が必要な人に関する記載です。 凝固障害の人、免疫不全の人、基礎疾患のある人はどう注意すればよいのか?、接種の際にそれらを申し出られても、我々としても、どう対応すればいいのか?が分かりません。基礎疾患のある方は感染した場合には重症化しやすいということで、接種が推奨されているだけに、この記載は混乱の原因になっています。 私は、上から3項目の方は「特に接種が有用なので、会場に来て不安で接種を躊躇することがないように注意する」、と解釈しています。

接種を受けた後の注意点

  • 本ワクチンの接種を受けた後、15 分以上(過去にアナフィラキシーを含む重いアレルギー症状を起こしたことがある方や、気分が悪くなったり、失神等を起こしたりしたことがある方は 30 分以上)、接種を受けた施設でお待ちいただき、体調に異常を感じた場合には、速やかに医師へ連絡してください。(急に起こる副反応に対応できます。)
  • 注射した部分は清潔に保つようにし、接種当日の入浴は問題ありませんが、注射した部分はこすらないようにしてください。
  • 当日の激しい運動は控えてください。

とありますので、 過去に予防接種を受けて、接種後 2 日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた人、 過去にけいれんを起こしたことがある人、 本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある人は、接種後会場で30分以上待機していただくことになりますが、本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある人、とはどんな人なんでしょう? 厚生労働省予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の報告よると、

ファイザー社の新型コロナワクチン接種後にVAERS(米国の予防接種後副反応報告システム)に報告されたアナフィラキシーは、2021年1月18日時点で50例(9,943,247回中)で、100万回あたり5例。74%が接種後15分以内、90%が接種後30分以内に発生しており、80%はアレルギーの既往のある者であった。

ワクチン接種によるアナフィラキシーは、一定の確率で起こります。 日本では2021年2月17日~3月11日に181,184回接種して、37件報告されています。 アナフィラキシーの80%はアレルギー既往のある方とはいえ、100万分の5の確率を事前の問診で予測することは不可能です。 従って、接種会場では万一(万一以下ですが)アナフィラキシーを起こす方がいらっしゃっても、救急対応できる、重篤な場合には後方病院に搬送できる体制をとっています。

副反応について

主な副反応は、注射した部分の痛み、頭痛、関節や筋肉の痛み、疲労、寒気、発熱等があります。また、まれに起こる重大な副反応として、ショックやアナフィラキシーがあります。なお、本ワクチンは、新しい種類のワクチンのため、これまでに明らかになっていない症状が出る可能性があります。接種後に気になる症状を認めた場合は、接種医あるいはかかりつけ医に相談しましょう。

痛みや発熱等は仕方がないですし、ショックやアナフィラキシーもほぼ予測不可能なので心配しても仕方がない、残る心配は「これまでに明らかになっていない症状が出る可能性」です。

今回接種する新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社製のワクチン)の特徴

本剤はメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであり、SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の設計図となる mRNA を脂質の膜に包んだ製剤です。本剤接種により mRNA がヒトの細胞内に取り込まれると、この mRNA を基に細胞内でウイルスのスパイクタンパク質が産生され、スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2 による感染症の予防ができると考えられています。

メッセンジャーRNAワクチンの技術自体は以前からあったのですが、この製法によるワクチンを実際ヒトに接種するのは今回が初めてです。これまでのワクチンのように弱毒化、不活化したウイルスそのもの使わずに、ヒトの体内で抗体産生を誘導する作用機序は、新型コロナ以外への応用も期待できる画期的なものなのですが、長期的な安全性は担保されていないのです。メッセンジャーRNAが細胞内に残ることはないので、恐らく大丈夫・・・とはおもうのですが、何ともいえません。 今回の新型コロナワクチンは欧米の「緊急事態」ということでスピード承認されたわけです。世界でも感染率、死亡率が格段に低い日本が「これまでに明らかになっていない症状が出る可能性」に目をつぶってでも、欧米に倣ってこのワクチン接種を急ぐべきかどうか?、については、接種性善説の状況の今、議論しにくいのですが、接種するかどうかを判断する重大なポイントです。 未接種者があとから接種することはできても、接種してしまってからナシにする、はできません。

予防接種健康被害救済制度について

予防接種では健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が起こることがあります。極めてまれではあるものの、なくすことができないことから、救済制度が設けられています。

新型コロナワクチンの予防接種によって健康被害が生じた場合にも、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます。申請に必要となる手続きなどについては、住民票がある市町村にご相談ください。

以上まとめますと、当日熱がなく元気であれば、治療中の病気や既往があっても接種は可能。 アナフィラキシーに関しては確率が極めて低いので予測は困難なので、心配しても仕方がない。会場では万一に備えた体制を整えている。 今回のワクチンは、これまでヒトに接種されたことのないもので、長期的な安全性に関しては未知で、これもいくら悩んでもわからないものはわからない。 ワクチンによる健康被害については、救済措置がある。 上記を総合して、接種するかどうかは、各自で考え判断してほしい、とおもいます。

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