ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2022年11月号掲載
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膵がん早期発見のポイントは?
糖尿病、主膵管拡張、IPMN、慢性膵炎、家族歴、膵のう胞に注意!

我が国の膵がんの患者数は2019年の統計で43,865人で、大腸がん155,625人、や胃がん124,319名に比べて少ないのですが、平均5年生存率が8.5%と極めて低く(大腸がん71.8%、胃がん66.6%)、難治がんの一つと言えます。

膵がんは胃がんや大腸がんのように確立された検診方法がなく、患者数も少ないため定期健診などで発見することは難しく、膵臓は胃の裏側に位置している臓器なので超音波検査でも全体を観察することが困難です。

また、胃や大腸のような消化管とは異なり腹膜で覆われていない後腹膜臓器なので、がんが周囲に広がりやすく、腹痛や背部痛の症状が出た時点で発見しても、進行がん、ということが多く、早期発見が極めて難しいのです。

どうしたら膵がんを早期発見できるのか?

胃がんはピロリ菌感染、肝がんは肝炎ウイルス感染がベースにあることがほとんどで、ピロリ菌や肝炎ウイルスを治療して予防した上で内視鏡や超音波検査の定期健診を受けることで早期発見が可能ですし、大腸がんに関しては便潜血検査を毎年受け続け、陽性の場合は内視鏡検査を受ける、前がん病変の大腸腺腫がみつかった場合には切除しておくことで、早期発見と予防が可能です。

しかし、膵がんに関して原因は不明、超音波検査での早期発見は困難、症状が出た時点は進行がんが多く、無症状の段階での早期発見、予防も難しいのです。

膵がんの早期発見につながるリスクファクターについては、糖尿病、主膵管拡張、膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)、慢性膵炎、家族歴、膵のう胞が知られています。

糖尿病はすべてのがんのリスクファクターなのですが、インスリンを分泌する臓器である膵臓の病気とは関連が強く、糖尿病の発症や増悪をきっかけに、無症状の膵がんを発見することは、当院でもしばしば経験しています。

腹部超音波検査では膵臓全体を完全に観察することは難しいのですが、がんが発見できなくても、膵管拡張がみつかることがあります。膵管は消化液である膵液を十二指腸に分泌する、膵臓を貫く径1ミリ以下の細い管なのですが、何らかの原因で膵液の流れが悪くなると、膵管が太くなってきます。その原因が膵がんである可能性があるのです。(図2)

他にも膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm; IPMN)、膵のう胞といった、リスク因子となる病変が発見される場合もあります。

医師向けサイトのm3.com意識調査で、医師会員781人に、膵がんを疑う症例を診断または紹介した経験があるか尋ねたところ、386人が「ある」と回答した。

この386人に、重視するリスク因子を複数回答で聞いた結果(図3)、「糖尿病の増悪」が最多の59.6%に上った。2019年10月に行った同様の調査でも、糖尿病の増悪が68.8%で最も多く、同様の傾向にあった。次いで「主膵管拡張」が51.6%、「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」が51.3%となった。

前回の調査では、「糖尿病の増悪」が68.8%、「主膵管拡張」が60.5%、「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」が55.0%だった。2019年10月10日-15日に実施した前回の調査でも、全体の回答割合に増減はあったものの重視する順番は変わらなかった。

また、膵がんのリスク因子があるものの経過観察とした症例が6カ月以内に膵がんと診断されるに至った経験があるか尋ねた質問では、36.8%が「ある」と回答した。

ハイリスク者や、膵がんを疑がった場合はどうするのか?

当院では、院内でできる腹部超音波検査、腫瘍マーカー(CA19-9、エラスターゼ1など)をまず行い、定期的に継続しています。

腹部超音波検査で膵臓全体をみることは困難ですが、見える範囲での腫瘍の確認、膵管拡張やのう胞などリスク病変の発見や定期観察を行っていきます。

腫瘍マーカーの上昇しない膵がんも少なくないため、早期がんの発見には不十分で、反対に腫瘍マーカーが高い=がんがある、というわけではありません。しかし腫瘍マーカーを定期的に測って変動をみる、そして前値よりも上昇している、という場合には、がんの可能性が高いので、定期的チェックの継続は有用です。

その上で、提携している検査センターで腹部MRI検査を行います。MRI検査では腹部超音波検査で盲点になりやすい膵尾部までしっかりみることができますし、膵臓に特化したMRCPという撮影方法を追加することで、微細な膵管拡張やのう胞、IPMNを発見することも可能です。同じ施設で定期的に検査し、前回の画像と比較することで、早期発見につながります。リスクに応じて年に1~4回の検査をお願いしています。 MRI検査は被ばくがないため、検査を繰り返しても身体へのダメージは少ないのがメリットです。

腹部超音波やMRI検査で膵管やのう胞、IPMNに変化がある場合や腫瘍マーカーの上昇があった場合には、提携施設に超音波内視鏡検査をお願いしています。超音波内視鏡は、先端に超音波の端子がついている内視鏡で、胃の中から隣接する膵臓を超音波検査するイメージです。そして、超音波内視鏡下で、胃の壁から膵臓の病変に対して、針を刺して組織を採ることもできるので、正確な診断が可能になります。(図4)

最後に、同意識調査における「定期検査・フォロー」についての回答医師のフリーアンサーをご紹介します。

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