ひもんやだよりWEB版
ひもんやだよりWEB版
ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2023年07月号掲載
!

あんパンとメロンパン?!
胃の隆起性病変について

5月のコロナ明け宣言以降、胃の内視鏡検診をお受けになる方が増えています。コロナ禍の健診控えで、進行がんが増えているという報告もありますので、目黒区民検診などの機会をぜひご利用いただきたいとおもいます。

当院は経鼻内視鏡のため、むせ込みが少ないので、検査中にモニター画面でご自身の胃の中をお見せしながら説明をしております。 胃粘膜に盛り上がった病変があると、驚かれてご不安になる方も多いのですが、胃の盛り上がり病変には悪い物は少なく、例え悪物であっても進行はゆっくりで、潰瘍などの凹んだ病変よりも治療しやすいので、ご安心ください。

胃粘膜の盛り上がり病変で一番多いのは「団子兄弟」型で、コロコロとした小さなポリープが多発しているタイプ。これは「胃底腺ポリープ」で、ほとんどがん化することのない良性で、無症状なので治療の必要もありません。ピロリ菌感染歴のない胃粘膜にできやすいので、胃底腺ポリープのある方は胃がんになりにくいことがわかっています。(写真1)

「あんパン」型は大きな病変のこともあり、ご覧になってびっくりされることも多いのですが、これは粘膜表面ではなく粘膜の下にある病変が粘膜を押し上げている状態で「粘膜下腫瘍」と総称されています。(写真2)生地の表面の状態から中味を推測できることが多く、表面にゴマが乗っていればあんパンかな?、グローブみたいな切れ込みがあればクリームパンかな?、みたいな。ただし、ゴマのついていないあんパンもありますし、ジャムパンもチョコパンもあるので判断が難しいこともあります。通常内視鏡検査で病変を見つけたときは組織を小さなはさみで採取する「生検」を行うのですが、あんパン型の場合、表面の組織を採取して調べても、パン生地しかとれないので、あんが何かはわかりません。そこで内視鏡の先に超音波をつけた「超音波内視鏡」で中味を調べたり、更に針であんを刺して調べる「針生検」を行ったりします。

あんパン型、すなわち胃粘膜腫瘍は、平滑筋腫や、脂肪腫、嚢胞、迷入膵、神経鞘腫といった良性のものが多く、GIST(gastrointestinal stromal tumor:消化管間質腫瘍)という消化管を動かす筋肉の細胞から発生した悪性病変もあるのですが、進行は遅く転移も少ないためあわてる必要はありません。GISTはサイズが大きいほど悪性度が高い傾向にありますが、周囲組織への浸潤の少ないため、内視鏡切除、腹腔鏡手術で完治してしまうことが多いので、治療も治療後の経過も楽です。

肝臓や脾臓など、胃に隣接する臓器が胃壁を外側から押して、胃の粘膜が盛り上がってみえる「外性圧排」もあんパン型になりますが、これも盛り上がり方から判断して胃外の臓器に異常がありそうな場合はCTやMRI検査を行って診断します。

あんパン型の病変は、経過観察が重要です。万が一悪性のものであれば中のあんが徐々に大きくなって盛り上がりが大きくなったり、あんが表面に顔を出してくることがあるので、定期的な内視鏡検査をお勧めしています。

「メロンパン」型は病変が胃粘膜の表面にあるもので、胃がんや胃腺腫など、治療が必要なものが多い病変です。表面のクッキー部分を生検すれば診断がつきますが、クッキー部分がどのくらい深く生地に食い込んでいるかが治療や治療後の経過の上でたいへん重要になります。治療はメロンパンのクッキー部分を剥がしてしまえばよいので、メロンパン型はがんだったとしても、凹んだ潰瘍を作るがんよりも治療がしやすく、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection:内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる内視鏡治療で、おなかを切らずに完治することも可能です。(図1)(写真3)

なお、関西、特に神戸ではメロンパンというと、紡錘形のパン生地の中に白あんが入ったあんパンのことをいい、いわゆるメロンパンはサンライズと呼ばれているそうなので注意が必要です。

ページ先頭へ