ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2024年01月号掲載
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冬の食中毒にご注意!

食中毒というと暑い季節のイメージですが、冬季にも多く発生しています。

先月には目黒区内のマフィン屋さんがイベントで提供したマフィンを召し上がった方から、嘔吐や腹痛の症状が多く報告されたため、現在保健所が調査中です。このお店は無添加、低糖の商品で人気だったのですが、イベント用に多くの商品を作り置きしたために、保存料無添加で防菌効果のある糖分も少ない商品だったことが裏目に出てしまったようです。

年末年始は忘年会、クリスマス、新年会、そしておせち料理などで食品の需要が高まるため、作り置きの食品を摂る機会が増えますので注意が必要です。

冬の食中毒の原因ウイルス、細菌の特徴として「熱に強い」、ということがあげられます。

今回のマフィンによる食中毒は、「セレウス菌」が原因ではないかと推測されます。セレウス菌は、河川や土の中など自然界に広くいる細菌で、米・小麦・豆・野菜などの農作物・穀物を原料とする食品に存在し、食中毒のイメージの少ない、「加熱した炭水化物が原因になる」ことが多いので、気を付けなくてはいけません。セレウス菌は「90℃、60分の加熱にも耐える」"芽胞"を形成し、「30℃前後でもっとも活発」となり、冷めた調理済食品中で急激に増殖する特性をもっています。調理は必要最小量にし、調理後は早めに食べきり、室温で放置せずに速やかに冷蔵庫に保存することが大切です。

セレウス菌による食中毒では、嘔吐型は激しい吐き気、嘔吐など、下痢型は腹痛・下痢などの症状がみられます。潜伏期間は、嘔吐型は30分〜6時間、下痢型は8〜16時間です。

「ウェルシュ菌」も熱に強い細菌で、100℃、6時間の加熱にも耐える"芽胞"を形成し、酸素のないところでも増殖できます。土や水の中、健康な人や動物の腸内など自然界に幅広く生息している細菌で、牛・鶏・魚も保菌していて、菌で汚染された肉類や魚介類を使った「カレー」や「スープ」「シチュー」などが原因になること多いので、大量調理は要注意です。またウェルシュ菌は空気が嫌いな細菌のため、粘性の高い煮込み料理では鍋底の酸素濃度が低いので、「ウェルシュ菌は酸素の少ない"鍋底"近くで増殖」してしまいます。

調理中はよくかき混ぜ、鍋底にも空気を送りながら加熱しましょう。調理後は室温で放置せず、保存する場合は速やかに粗熱を取って厚みの少ない容器で冷蔵庫に保存しましょう。

感染した場合には、水様性の下痢・腹痛を認め、潜伏期間6〜18時間です。

「ノロウイルス感染症」は11月頃から流行がはじまり12〜2月にピークを迎えますが、年間を通して発生します。ノロウイルスは細菌性の食中毒とは異なり、人の腸管内でのみ増殖し、食品では増殖しません。感染者の排泄物や吐物に含まれているウイルスが人の手指に付着し、それが食品に付着することで感染が広まりますので、あらゆる食品が原因になる可能性があります。ノロウイルスは乾燥や熱にも強く、自然環境下でも長期間生存が可能で、感染力が非常に強く、少量のウイルス量(10〜100個)でも感染します。

潜伏期間は12〜48時間で、発症すると激しい嘔吐や下痢、腹痛、発熱がみられ、通常1〜2日程度で症状は治まりますますが、乳幼児や高齢者は重症化しやすいので、注意が必要です。ノロウイルスで怖いのは無症状の感染者が多く存在することです。コロナ感染でもそうですが、元気な無症状感染者が無自覚で感染を広げてしまいます。

感染対策は「食品を扱うときや、食事の直前にはしっかり手を洗う」ことです。またトイレの便座や水道の蛇口など、吐物や排泄物が付着している可能性のある場所に触れた場合にも、しっかりと手を洗ってください。また、ノロウイルスはアルコール消毒にも強いので、感染者の食器や衣服の消毒には、塩素系漂白剤を水で薄めて、0.1%(1000ppm)の塩素系漂白剤調製液使ってください。

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