ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
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TEL.03‐5704‐0810
2024年03月号掲載
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ワンダフル!にゃんで???

犬を飼育している高齢者は認知症になるリスクが40%低い

東京都健康長寿医療センターの「社会参加とヘルシーエイジング研究チーム」は、「犬を飼育している高齢者は認知症になるリスクが40%低い」という研究成果を10月11日(2023年)、アメリカの医学誌に発表したことを、同センターのサイトでプレスリリースしています。同様の調査結果はアメリカでも報告されていますが、日本人を対象にした調査で明らかにされたのは初めてです。

同研究チームはこれまでに、日本の高齢者1万人以上を対象にした調査で、犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態のこと)により介護が必要になったり、亡くなったりするリスクが半減することを明らかにしています。また、過去に一度も犬を飼ったことがない高齢者がフレイルなどにより要介護状態になったり死亡するリスクを1とすると、犬を飼っている高齢者のそのリスクは0.54倍とほぼ半減することも確認、報告しています。

今回の調査は、東京都の65歳以上の男女1万1194人(平均年齢74.2歳)を対象として、2016(平成28)年から2020(令和2)年までのデータを統計学的に分析したものです。

調査対象となった高齢者のうち犬を飼っている人の割合は8.6%、猫を飼っている人は6.3%でした。調査対象者のうち調査期間の4年間に認知症を発症した人は5%で、犬を飼っている人は飼っていない人に比べ、認知症になるリスクが40%低いという結果を突き止めています。さらに同じ犬を飼っている高齢者でも、日常的に犬と散歩するなどの運動習慣がある人や飼い主同士の交流があるなど社会的に孤立していない人の方が、認知症の発症リスクは低い傾向にあることも明らかにしています。

一方で同じペットでも猫については、飼っている人と飼っていない人との間で認知症の発症リスクに意味のある差は見られなかった、と報告しています。

同センターの協力研究員で国立環境研究所の谷口優主任研究員は、「犬特有の散歩を介した運動や、知人の輪の広がりが飼い主への良い効果をもたらしている」ことを指摘。犬の飼育によって認知症予防や健康維持が期待できるとしています。

出展:東京都健康長寿医療センター プレスリリース 2023年10月24日「ペット飼育と認知症発症リスク」

もうひとつ、犬の医療貢献の情報をご紹介します。

乳がんを正確に判別 がん探知犬育成センター 日本医科大との研究公開

千葉県館山市犬石のがん探知犬育成センター「セントシュガージャパン」で訓練された犬の、乳がんを発見する研究が、欧州の学術サイト「biology」で10日、公開された。乳がん患者の尿サンプルから乳がんを正確に検出した結果が示され、がん検診用のセンサー開発に向け期待が高まる。日本医科大学との研究で、犬種は、ラブラドール・レトリバー。実験は、乳がん患者40人、乳がん以外の患者142人、健常者18人の尿サンプルで行われ、40回の二重盲検試験(研究者やトレーナーが正解を知らない試験)で、40回とも乳がん患者のサンプルを嗅ぎ分けたという。

研究は、「乳がん特有のにおい物質があるか」とする仮説を検証するもので、物質の同定により医療用の電子センサーを開発する予備研究と位置付けられている。がん探知犬とは、犬の驚異的な嗅覚を利用して、がん患者の呼気や尿に含まれる特有のにおいを嗅ぎ分け、がんの早期発見につなげることを目的に訓練される犬。

佐藤悠二代表(74)は、「がん全体ではなく、乳がんに限定して判別できたのが今回のポイント。他の種類のがんについても大学と研究を進めたい」と意欲を見せた。

出展:2021年06月19日 03時00分 房日新聞

現在犬の嗅覚によるがん検査は、「ドッグラボ」のホームページhttps://doglab.jp/doglab/で受け付けています。

受けられる検診は呼気を使って、多数のがんの可能性を判定する検査です。

がん患者の呼気の臭いを覚えたがん探査犬が複数の呼気検体の前を歩き、がん患者の呼気の臭いを嗅ぐと、その場でお座りをする様子はYouTubeでも紹介されています。

犬の嗅覚は人間の10万倍~数百万倍といわれており、人間が嗅ぎ取れる匂い分子の100万分の1の大きさでも嗅ぎ取れる、つまりそれだけ多くの匂いを嗅ぎ分けられます。警察犬や麻薬探知犬、災害救助犬など、犬の嗅覚は多くの場所で活躍しているので、がん患者の臭いを嗅ぎ分けられても不思議ではなく、期待できる検査法だとおもいます。

群馬県は、医療探知犬としてラブラドルレトリバー2匹を育成中で、群馬医療福祉大(前橋市)の村上博和教授に3千万円で委託契約し、乳がん、すい臓がん、悪性リンパ腫といった希少がんが探知対象となるかを確かめるとともに、症状が出る前の検査への応用を目指しています。

問題点は、がん探査犬の資質のある犬が極めて少ない事。がん探知犬第1号は、天才的な嗅覚を持つ水難救助犬マリーン。ラブラドールレトリバーのマリーンは20m近く沈んだ水死体から発せられる微量のガスを嗅ぎ当てるほどで、現在、育成センターで活動する5頭はいずれもマリーンの血を引いていますが、今後マリーンのようなGODDOGが輩出するかは不確定要素です。また実用化する場合、短時間での多くの検体の結果を出さなくてはならないため、探査犬が何頭も必要になり、その選別や訓練には膨大な時間と費用が掛かります。


最後に、猫愛好家にはちょっと分の悪い研究報告をご紹介します。

猫を飼うと統合失調症になるのは本当か?

「猫の飼育は、統合失調症関連障害および精神病症状様体験(PLE)のリスク修飾因子である」といわれています。この可能性についてオーストラリア・クイーンズランド大学脳研究所のJohn J McGrath氏らの研究グループは、猫の飼育と統合失調症関連の転帰との関係を報告した文献の系統的レビューおよびメタ解析を行ないました。

1980年1月1日~2023年5月30日の出版物について、猫の飼育と統合失調症関連の転帰に関するオリジナルデータを報告している研究を対象に、広義の定義(猫の所有、猫の咬傷、猫との接触)に基づく推定値を解析し評価しました。

主な結果は以下のとおり。

これらの結果からMcGrath氏は「猫の飼育(猫への曝露)と広義の統合失調症関連障害のリスク増加との関連を支持するものだった」と結論付けています。

原著論文:McGrath JJ, et al. Schizophr Bull. 2023 Dec 2. [Epub ahead of print]
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