肥満の原因は脂肪よりも糖質の摂り過ぎです
中性脂肪(TG)は食餌由来だけではなく、体内で合成されます。摂取した糖質(炭水化物)がエネルギー生産やグリコーゲン合成に必要な量を上回った場合には、脂肪酸に変換されます。
グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→マロニルCoA→アセトアセチルACP→・・・→パルミチン酸
という脂肪酸が合成されます。炭素数16のパルミチン酸からは更に長鎖の脂肪酸が合成されます。脂肪酸はTGの形でコレステロールと一緒にVLDLというリポ蛋白に乗って肝臓から血中に出ます。食餌由来のTGはリポ蛋白カイロミクロンの形で血管内を流れています。リポ蛋白に酵素、リポ蛋白質リパーゼが働くと、TGは遊離脂肪酸となってリポ蛋白から放出されて、脂肪細胞に取り込まれます。
脂肪細胞は細胞質内に脂肪滴を有する細胞で、単胞性脂肪細胞(白色脂肪細胞)と多胞性脂肪細胞(褐色脂肪細胞)とに分類されます。単胞性脂肪細胞は大型の脂肪滴が存在し、多胞性脂肪細胞には小型あるいは中型の脂肪滴が多数存在します。白色脂肪細胞は脂肪を体内に蓄積する働きがあり、褐色脂肪細胞は脂肪を燃やして熱やエネルギーを産生する細胞です。褐色脂肪細胞は脂肪細胞の1%しかなく、加齢により減少します。子供の方が体温が高く、肥満で冷え性の大人が多いのはそのためです。
白色脂肪細胞はTGを取り込んでいくことで成熟し、成熟して肥大した脂肪細胞は脂肪組織を形成、脂肪組織は下腹部、お尻、太もも、背中、腕の上部、内臓の回りに多く認めます。
我々を構成する細胞はグルコースを取り込んでエネルギーにすることで活動しています。細胞膜のインスリン受容体にインスリンが結合することで、細胞膜の透過性が高まって、GLUT4 (glucose transporter type 4) というたんぱく質を介して、細胞内にグルコースを取り込むことができます。結果血液中のグルコース濃度は下がります。これが膵臓から分泌されるインスリンが血糖値を下げる理由で、このインスリンの分泌量が少なかったり働きが悪いために細胞内にグルコースが取り込まれず、血糖値が下がらない病気が糖尿病です。
更に脂肪細胞は、インスリン受容体を介さずにグルコースの取り込みを促進するアディポネクチンというホルモンを分泌します。
脂肪細胞に取り込まれたグルコースはエネルギーに使われるだけでなく、
グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→マロニルCoA→アセトアセチルACP→・・・→パルミチン酸
という脂肪酸合成が脂肪細胞内でも行われ、脂肪酸はTGに変換されて脂肪細胞に蓄えられます。
脂肪細胞は食事から得たTG、肝臓で合成されたTGだけでなく、過剰のグルコースをどんどん取り込みTGに変えて保存しているのです。それにより細胞内の脂肪滴は大きくなり、脂肪細胞は肥大化していきます。脂肪細胞も細胞分裂し、脂肪細胞の数も増加していきます。これが肥満の本態です。
肥満の原因は糖質摂取過多で、高脂肪食の影響は少ないのです。
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