ひもんやだよりWEB版
ひもんやだよりWEB版
ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2026年05月号掲載
!

区民健診の検査項目を解説します -2- 腎機能検査/尿酸値

腎機能検査

腎機能検査は国の定める特定健診の項目には入っておりませんが、目黒区では追加されています。 腎臓は血液中の老廃物や過剰な物質を漉し出し尿として体外に捨て、血液をきれいにして身体に戻す働きをしている臓器です。腎臓の働きが悪くなると身体に老廃物が溜まり、体内の水分や電解質などの物質バランスが崩れて、最終的には人工透析に至ります。

腎臓は糸球体と呼ばれる小さな「ざる」がたくさん集まっているイメージで、ざるの目が破れたり目詰まりした糸球体は元には戻りません。糸球体は再生せず、腎臓にある糸球体の数は生まれた時に決まっているので、実は腎臓の能力には先天的要素が大きい。出生後に「ざる」が一つ一つ潰れていき、残存する糸球体の数が一定レベル以下になると、腎機能障害が起こり始めます。腎臓は2つあり、一生を生きるのに十分な数の糸球体があるので、多くの人は生涯腎機能を維持できますが、低体重出生などで生まれつき「ざる」の持ち分が少ない方や、ライフスタイルや糖尿病などの病気、加齢といった後天的な要因で、寿命よりも前に糸球体が足りなくなってしまうのが腎機能低下の本態です。

区民検診では血清クレアチニン値と、それから計算されるeGFR:推算糸球体ろ過量(estimated Glomerular Filtration Rate)で腎機能評価しています。また尿検査で尿潜血、尿蛋白が出ている場合も腎臓に異常がある可能性があります。

クレアチニンは骨格筋が動くエネルギーを供給しているクレアチンの代謝物で、糸球体でろ過されると、再吸収されることもなく、ほぼ100%が尿として排泄されるため、糸球体の機能評価に利用されています。

クレアチニンの前駆体であるクレアチンは、腎臓と肝臓で合成されます。腎臓でL-アルギニンとグリシンからグアニジノ酢酸が作られ、肝臓でグアニジノ酢酸とS-アデノシルメチオニンからクレアチンが作られます。そしてクレアチンはクレアチンリン酸の形で筋肉に蓄えられます。

骨格筋の繊維は筋節(サルコメア)が連節していて、筋節にはアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが交互に並行に走っていて、二つのフィラメントが中央に向かうように滑走することで一つひとつの筋節が収縮し、筋線維を動かしています。

筋肉が収縮する際には、筋節のミオシン頭部に含まれるATP分解酵素がATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)に分解し、このときに放出されるエネルギーがアクチンとミオシンの滑走を起こし、筋が収縮します。

そして筋収縮が終わるとADPはクレアチンリン酸からリン酸を供給されてATPに戻り、また筋収縮のエネルギーになります。クレアチンリン酸塩はリン酸を失ってクレアチンになり、クレアチンは代謝されてクレアチニンになって糸球体から尿に排出されます。

クレアチニンは再吸収されないため、血中のクレアチニン濃度が高いということは、糸球体の「ざる」でクレアチニンを濃して尿に捨てられていない、すなわち腎機能が落ちていると判断できるわけです。

クレアチニンは筋肉で作られる老廃物で、全身の筋肉量に影響されるため、同じクレアチニン値でも、筋肉の多い若年者と少ない高齢者とでは同じ基準で腎機能を評価することはできず、性別や人種によっても筋肉量は異なるので、クレアチニン値で正確に腎機能を評価することは困難です。

そこで、年齢、性別、血清クレアチニン値を考慮して、より正確に糸球体の濾過能力を推定するために考案されたのがeGFR:推算糸球体ろ過量(estimated Glomerular Filtration Rate)です。

日本人のeGFR計算式は、

男性:eGFR (mL/分/1.73m²) = 194 × 血清クレアチニン値^(-1.094) × 年齢^(-0.287)、女性:eGFR=男性eGFR×0.739

日本人の平均体表面積1.73m²あたり、全糸球体で1分間に濾過できる血漿量の推定値です。数値が高い程糸球体の濾過能力が高い、すなわち腎機能が良いと判断します。

概ね、eGFR90以上で腎機能は正常、60以上90未満は軽度低下、60未満は腎機能低下と評価できます。

尿潜血、尿蛋白は様々な要因で起こりますが、腎疾患の重大なサインです。糸球体の「ざる」が破けると、本来は尿中には出て行かないはずの赤血球が漏れ出てしまいます。また糸球体の「ざる」はマイナスに荷電されていて、マイナス荷電された物質を跳ね返して通さない性質を持っています。マイナスに荷電されている蛋白質は糸球体を通過できず、ざるの目よりも小さいアルブミンでもマイナス荷電のため糸球体を通過できません。

尿潜血、尿蛋白が出ているということは、糸球体の破れがある、糸球体の荷電が破綻している可能性があり、クレアチニン値やeGFR値に異常が出る前に尿潜血、尿蛋白のサインが出ることが多いので、早めの原因精査と対応をすべきです。

糸球体は親からもらった消耗品であり、腎機能は基本的には改善しません。今残っている糸球体をいかに減らさずに生涯維持するかを考えなくてはなりません。クレアチニン値やeGFR値に異常が出てからでは間に合わない場合もあります。腎機能の数値に異常がなくても、尿潜血、尿蛋白がみられた方には精査をお勧めしています。

尿酸値

尿酸値は国の定める特定健診の項目には入っておりませんが、目黒区では追加されています。正常値は7mg/dl未満です。

当院では拇趾関節(痛風の好発部位)、足関節、膝関節の腫れを伴った強い関節痛で受診された患者さんには、院内迅速検査で尿酸値を測定しています。目的は、痛風による関節痛かどうかの診断と、尿酸値が6mg/dl以下であれば偽痛風や関節リウマチなど、痛風以外の病気の可能性を考えるためです。

しかしながら健診で無症状の方に尿酸値を測定するメリットは、特に女性には、あまりない、と私はおもっています。

尿酸は体内で一日約600mg生成され、そのうち肝臓で合成されるのが500mgで、食事由来の尿酸は100mgに過ぎません。一般に高尿酸血症の方にはビールや豚肉などプリン体の多い物を避けるような生活指導がなされていますが、残念ながら食事の影響よりも肝臓で尿酸を合成しやすい「体質」であることが高尿酸血症の主たる原因です。

高尿酸血症の方は、高血圧、糖尿病、脂質異常症を合併しやすい傾向にありますが、高尿酸血症がそれら生活習慣病の原因ではなく、増悪因子でもありません。また腎機能障害との合併もみられますが、腎機能障害があると尿酸値が高くなるからで、逆はありません。腎盂に尿酸結石が詰まって腎機能を悪化させる痛風腎という病態もありますが、稀です。

尿酸=痛風とおもわれがちですが、尿酸値が高くても痛風発作を生涯起こさない人はたくさんいます。関節内で尿酸の結晶ができて痛風発作を起こしやすいかどうかも「体質」のようです。尿酸値(血液中の尿酸の量)と関節内の局所の尿酸濃度は一致せず、尿酸値7mg/dl以下でも痛風発作を繰り返している方もいますが、尿酸値6mg/dl以下では痛風発作はほとんどありません。

痛風発作は夏に多く、発汗による脱水で尿酸が濃縮されて関節内で結晶ができやすくなるためです。また痛風は圧倒的に男性に多い病気で、95%以上が男性です。特に若年女性が痛風発作を起こすことは稀で、女性ホルモンに尿酸排泄作用があるためといわれています。

痛風は生命にかかわる病気ではありませんが、その痛みは筆舌に尽くし難く生活の質を大きく下げてしまうので、発作を起こしたことのある方は、尿酸値を下げる(肝臓での尿酸合成を抑える)お薬を継続して、尿酸値6mg/dl以下を保つことをお勧めします。痛風発作を起こされたことがない方は、尿酸値が多少高くても、概ね9mg/dlを越えなければ治療の必要はないと考えています。

ページ先頭へ