ひもんや俳壇
ひもんや俳壇 2012
1月号
平成23年度 ひもんや俳壇賞
次席
次席
ひもんや診療所・院長賞
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あそぼうよまつぼっくりをキックして
もりおかゆうこ
秀作
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母の背を越えし中一夏休み
富所 敬子
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花氷届かぬ愛に触るるごと
戸田 徳子
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実石榴やあの頃どこも子だくさん
柴崎 英子
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短日や昨日につづく探し物
廣門登喜子
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かまきりに売られた喧嘩箒取る
安達久美子
佳作
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春茜目を伏せし間に消えゆける
川喜田秀雄
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三月の霜降る音の闇夜かな
原 良
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街灯の明りに雪の円舞かな
半澤 篤
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ゆうらりと地蔵に揺れておみなへし
山本 三郎
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虫の音に迎へられ入る美術館
安藤 虎雄
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元旦の誓ひそろそろほころびて
小澤たん子
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福島の球児頑張れ雲の峰
半澤ハツ子
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この街のオアシスなりし森茂る
武井 康子
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春一番押され入りたる喫茶店
飯田久美子
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いい日ねと声のとびくる秋日和
久保田光江
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椿落つ蕾のままでありしかな
森崎 富貴
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春惜しむ余生いよいよ忙しき
吉田 新子
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葉桜や人まばらなる目黒川
川部 義明
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濁流を浮きつ沈みつ白椿
宇都宮義長
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書の道に卒業はなし筆をとる
仲島 信
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冬さうび主なき庭の守り人か
山形 定房
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哲学の径を余さず散紅葉
渡辺 幸江
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楪やゆづるものなく年老いて
千葉百合子
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笙の音にひかれて見入る初神楽
浅田 智子
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十薬や病明るく告げし人
清水 悠子
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学校に紅白の幕水温む
畑山 則子
2月号
一般投句
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雨やみて月白々と冬に入る
川喜田秀雄
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年の瀬や手向けの花の交差点
富所 敬子
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南天の実の赤いあの家ですよ
原 良
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白紙にはらり分身木の葉髪
戸田 徳子
向原喜楽会・不動会
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お祓ひのきょろきょろ余所見七五三
安藤 虎雄
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セピア色我にもありし七五三
小澤孝ん子
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窓よりの風の身に入む頃となる
半澤ハツ子
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夫婦とてほどよく離れ柿二つ
柴崎 英子
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柿たわゝ茅葺屋根のそば処
武井 康子
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紅さして髪置の子のおちょぼ口
飯田久美子
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次郎柿剥くや好みし母のこと
久保田光江
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門前の法語煙らせ落葉焚
笹島美和子
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みどり児を話し相手に小六月
廣門登喜子
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啄みてまた啄みて小鳥去る
森崎 富貴
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貰ひたる十年日記書く夜長
川部 義明
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快方に向かふ病状冬日和
佐々木 弘
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干大根みな潮風に曲がりをり
宇都宮義長
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小春日や紬の映える鎌倉路
仲島 信
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結局は抱かれて撮られ七五三
黒澤三主寿
竹の子会
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屈強な芒の群も刈られけり
苅野 玲子
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暗がりに茶の花浮て歩を止めし
渡辺 幸江
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木道で交はすあいさつ草紅葉
千葉ゆり子
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境内の落葉掃く音三拍子
安達久美子
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高原の風に逆らひつゝ芒
苅野 節子
わかみどり会
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のんびりとバス待つ人ら着ぶくれて
清水 悠子
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玄関を狭めし鉢や冬に入る
畑山 則子
ミモザ会
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子も孫も帰りてやっと掃始
佐々木巴里
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冬灯をさらに暗めて深庇
三国 紀子
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常の座に常の夫婦や屠蘇祝ふ
石橋万喜子
3月号
一般投句
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地震後の人形ケース煤払ひ
川喜田秀雄
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スカイツリー一緒に見むと賀状あり
富所 敬子
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クリスマス体温計と添ひ寝して
原 良
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年果ての街に残心払ひけり
戸田 徳子
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ひらひらとはっぱがちるよかぜの中
森おかゆう子
向原喜楽会・不動会
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数へ日にひまあり友を見舞ひけり
安藤 虎雄
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数へ日の家事代行の忙しく
小澤孝ん子
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毛筆の律義な賀状もう来ない
半澤ハツ子
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チキンにも真っ赤なリボンクリスマス
柴崎 英子
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足らなきは足らなきまゝに年用意
武井 康子
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街灯のほんのり照らす焼いも屋
飯田久美子
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数へ日のきのふもけふもまたゝく間
久保田光江
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一服を惜しみ庭師の十二月
笹島美和子
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ドクターの一語に安堵年暮るる
廣門登喜子
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救急車来て一騒ぎ暮早し
森崎 富貴
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石蕗咲けり五百羅漢のお膝元
吉田 新子
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青春のリズムでダンス年忘れ
川部 義明
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日記買ふ来年こそはと意気込みて
佐々木 弘
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神官の幣束づくり師走かな
宇都宮義長
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玄関の男所帯にポインセチア
仲島 信
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女子大の裏の焼藷車かな
黒澤三主寿
竹の子会
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冬帝に挑む走者の息荒し
苅野 玲子
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鴛鴦や無事を確かめ合ふ夫婦
渡辺 幸江
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鴛鴦や肩を並べて老夫婦
千葉ゆり子
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遠ざかる焼いもの声追いかけて
安達久美子
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雑司ヶ谷霙となりし鬼子母神
苅野 節子
わかみどり会
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夜会へのドレスアップにマスクして
清水 悠子
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大声で子ら訪ね来る冬日和
畑山 則子
ミモザ会
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黄昏に薄紅梅の香を放つ
佐々木巴里
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街騒に呑み込まれゐる寒念仏
三国 紀子
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水のんで空仰ぐ鶏桃の花
石橋万喜子
4月号
一般投句
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初夢や盆景の富士岩一つ
川喜田秀雄
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初春や風にゆらぎし縄のれん
富所 敬子
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初東風や己に出会ふ旅に出む
戸田 徳子
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マフラーがかわいくかぜにおどってる
森おかゆう子
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いにしえのかぜをはこんでうめのはな
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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元朝に先づ奉る御神酒かな
安藤 虎雄
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それぞれのお国訛におめでたう
小澤孝ん子
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ゆるやかに余生を生きる薺粥
半澤ハツ子
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初詣人に疲れて戻りけり
柴崎 英子
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富士仰ぐ湯けむりのなか年あらた
武井 康子
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剪り供ふ千両の実の重さかな
飯田久美子
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静けさよ年頭ミサを待つ間
久保田光江
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境内の箒目にある淑気かな
笹島美和子
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初詣り託す思ひは平和なる
廣門登喜子
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初日の出希望を託す昇り竜
森崎 富貴
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業平の駅の名消ゆる去年今年
吉田 新子
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梅の香に心軽やか散歩道
川部 義明
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喜びも悲しみも果て冬の海
佐々木 弘
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一人居の居間に陣取る鏡餅
宇都宮義長
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寒木瓜や薄ら日の中咲き始む
仲島 信
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庭隅の紅白梅の咲き競ふ
西嶋 邦夫
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蝋梅に春待つ心託しけり
山形 定房
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転居先不明と戻る賀状かな
黒澤三主寿
竹の子会
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厳しさを楽しさに替へ雪祭り
苅野 玲子
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亡き母の声音まねして歌留多読む
渡辺 幸江
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松過ぎて早や喧噪の中に入る
千葉ゆり子
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筆よりも言葉を選び初硯
安達久美子
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枝々に尾長群来る寒の朝
苅野 節子
わかみどり会
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雪の中工事の音の遠くより
清水 悠子
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思はざるときに佳きこと福寿草
畑山 則子
ミモザ会
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雛人形共に傘寿を祝ひけり
佐々木巴里
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梅にこそ綻ぶと言ふ佳き言葉
三国 紀子
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紅梅や巫女の立ち居に鈴の鳴り
石橋万喜子
5月号
一般投句
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壷に挿す二輪の椿会釈せり
川喜田秀雄
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母は荷を子は袋背に春一番
原 良
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ひな祭り十人余りの宴となり
富所 敬子
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薄氷にふれ逡巡の細き指
戸田 徳子
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さくら草の薄紅の色春を告げ
矢代アリサ
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友チョコをあげたいバレンタインの日
森おかゆう子
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たびびとをそっとみているやえざくら
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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普段着のまゝのんびりと梅見かな
安藤 虎雄
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庭園のアートとなりし臥竜梅
小澤孝ん子
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転倒し肋骨いため二日灸
半澤ハツ子
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一葉の短き恋や梅の花
柴崎 英子
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休み田の土のふくらみ下萌ゆる
武井 康子
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日々気まゝひとり住まひに春近し
飯田久美子
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ほころびは明日かと思ふ梅の紅
久保田光江
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いつもこの辺りより雪解けはじむ
笹島美和子
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雪晴の光の中へ入りにけり
廣門登喜子
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マフラーのぐるぐる巻きもファッションと
森崎 富貴
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愛犬も家族のひとり賀状くる
吉田 新子
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災害の地にも春立つ気配あり
川部 義明
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草萌えて賑やかになる散歩道
佐々木 弘
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浅春の音締め漏れくる連子窓
宇都宮義長
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黒塀に身を乗り出して梅白し
仲島 信
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カーブまたカーブ梅咲く峠越
黒澤三主寿
竹の子会
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春雨に黒く染まりし木々の幹
苅野 玲子
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寒木瓜に乾ききったる空のあり
渡辺 幸江
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土手並木独り静かに冬桜
千葉ゆり子
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寒明けやパステルカラーの花市場
安達久美子
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鬼の面つけ抱かれる子節分会
苅野 節子
わかみどり会
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どこまでも河津桜の道つゞく
浅田 智子
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暖かき日差し背にして信号待つ
清水 悠子
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硝子戸を鳴らす海風春浅し
畑山 則子
ミモザ会
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彼岸過ぎ鉢植すべて庭に出し
佐々木巴里
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残る鴨浮寝むさぼる一羽かな
三国 紀子
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春しぐれ枯山水の渦模様
石橋万喜子
6月号
一般投句
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スカイツリーとは三月十日の供養塔
川喜田秀雄
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広島産大長と言ふ胡瓜食ふ
原 良
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著莪の花遠き生家の庭に在り
富所 敬子
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オペ了る生きよと花の輝けり
戸田 徳子
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花見してあそんだあとはかなしいよ
森おかゆう子
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ひろしげのえはにほんばしはるのくも
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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水温む親子のオールゆるやかに
安藤 虎雄
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天皇陛下御快気と聞く水温む
小澤孝ん子
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余寒なほ含みて苦し粉ぐすり
半澤ハツ子
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びいどろの雛様の面透きとほる
柴崎 英子
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笑顔やがて涙となりし卒業歌
武井 康子
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通されし書院に桃の花明り
飯田久美子
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遺品なる母のひゝなの眼のやさし
久保田光江
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桜餠母の忌日の姉妹
笹島美和子
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たんぽぽの花そり返る日和かな
廣門登喜子
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春立つやひいばあさんとなりにけり
森崎 富貴
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たんぽぽを見つけて少し嬉しくて
吉田 新子
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のびのびとラジオ体操風光る
川部 義明
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胸内に母のしぐさや土筆摘む
佐々木 弘
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震災を心に彼岸詣かな
宇都宮義長
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初々し檀家廻りの彼岸僧
仲島 信
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今年また息災にわが雛に会ふ
黒澤三主寿
竹の子会
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種を蒔く人を見下す鴉かな
苅野 玲子
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下萌や野仏どれも動きさう
渡辺 幸江
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霾や物干し今日も一拭きし
千葉ゆり子
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種蒔きや区民農園にぎはひて
安達久美子
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枝々に短冊の揺れ梅探る
苅野 節子
わかみどり会
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春一番思いっきりの無駄使い
清水 悠子
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着手せぬ工事予定地地虫出づ
畑山 則子
ミモザ会
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遠足やリュック並べて土手の上
佐々木巴里
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犇めきて馬酔木の花は鈴振れず
三国 紀子
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緑蔭に座す木洩れ日を身にまとひ
石橋万喜子
7月号
一般投句
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目覚めれば病葉を摘む吾がたつき
川喜田秀雄
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ピーマンが熟れて鴉とにらめっこ
原 良
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風薫る銀杏並木の色の濃き
富所 敬子
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天清和一木一草瑞々し
戸田 徳子
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ジャスミンの香りにむせぶ初夏の朝
矢代アリサ
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こいのぼりまだゆれてないさびしいな
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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放射能出ていませんと茶摘かな
安藤 虎雄
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ちょとカーデガン羽織っただけの花衣
小澤孝ん子
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桜より桜へと押す車椅子
半澤ハツ子
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花衣一ト日の余韻たたみけり
柴崎 英子
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再会に心ときめく花衣
武井 康子
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篝火に映えて粋なる花ごろも
飯田久美子
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花衣たたみつ偲ぶ姉のこと
久保田光江
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花衣畳み即ち厨妻
笹島美和子
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万緑や息を大きく風の中
廣門登喜子
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嫁娘孫も女や柏餠
森崎 富貴
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花一つ添へあるランチレストラン
吉田 新子
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蘇へる青春の日々花吹雪
川部 義明
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初蝶や出会ひも別れも束の間に
佐々木 弘
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蹴り競ふふらここ高く高くかな
宇都宮義長
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ふらここを落ちて泣けどもこぎ始む
仲島 信
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やうやくに癒えて残花を仰ぎけり
黒澤三主寿
竹の子会
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雨止みし報せのごとく囀れり
苅野 玲子
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散りたての花びら掬ひおままごと
渡辺 幸江
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弁当の予約ためらふ遅桜
千葉ゆり子
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物置に見つけし父の遍路杖
安達久美子
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青麦のビロードの波風の波
苅野 節子
わかみどり会
ミモザ会
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筍が土盛り上げて嵯峨野みち
佐々木巴里
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いづれかと名札確かめあやめなる
三国 紀子
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じゃんけんで勝ちては進むこどもの日
石橋万喜子
8月号
一般投句
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剪定の枝貰ひ受く黐の花
川喜田秀雄
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鳴神や堂裡読経の声に和す
原 良
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退院の朝咲くれし花菖蒲
富所 敬子
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精緻なる文字盤あえか時計草
戸田 徳子
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母の日にママ大すきとえてがみを
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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母の日や母を越えたる我が齢
安藤 虎雄
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母の日の母も達者で留守がよく
小澤孝ん子
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葉桜を右に左に通院す
半澤ハツ子
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母の日や母はいつでも身奇麗に
柴崎 英子
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母の日や苦楽を共の手を握る
武井 康子
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寝ころんで転がりて子等若草に
飯田久美子
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卯の花や小学唱歌口ずさむ
久保田光江
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筆置いて大きく背伸び柿若葉
鈴木恵美子
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母の日や母無きことにまだ慣れず
笹島美和子
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緑蔭の広きに心遊ばせて
廣門登喜子
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仮住みのカーネーションを飾る部屋
森崎 富貴
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晴の日を賜り三社祭かな
吉田 新子
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新緑に新たな力貰ひけり
川部 義明
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囀や散歩の足の軽くなる
佐々木 弘
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祭足袋揃へ若衆の勢揃ひ
宇都宮義長
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被災地の命の叫び若葉萌ゆ
仲島 信
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葉桜やパパに任せし乳母車
黒澤三主寿
竹の子会
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いつの間に土手埋め尽くし諸葛菜
苅野 玲子
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京筍まとひし皮も役者色
渡辺 幸江
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梯子掛け願ひを掛けて袋掛
千葉ゆり子
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袋掛産衣を着せるごとくにも
安達久美子
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亡き母に贈るなら赤カーネーション
苅野 節子
わかみどり会
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夏めきてドレス華やぐ集ひかな
清水 悠子
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初夏や如雨露の先は象の鼻
畑山 則子
ミモザ会
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夏帯の背すぢまつすぐ伸ばしけり
佐々木巴里
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拭き込まる百間廊下緑さす
三国 紀子
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夜更けにも風を放さぬ軒風鈴
石橋万喜子
9月号
一般投句
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待つほどは音の遅れず遠花火
原 良
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茉莉花の二度咲きなるもなほ愛し
富所 敬子
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開かぬ窓空へ積み上げビル灼くる
戸田 徳子
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ベランダにいろとりどりの傘の花
矢代アリサ
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ふじのやまたかいよたかいなつのそら
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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梅雨寒や猫をいだきて眠りけり
安藤 虎雄
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鈴蘭の小さきささやきみやげとす
小澤孝ん子
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みちのくに想ひを馳せり梅雨に入る
半澤ハツ子
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葉桜の洩れ日揺ら揺らカフェテラス
柴崎 英子
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あぢさゐを右に左に峠越
武井 康子
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鈴蘭の葉かげに揺れる花の数
飯田久美子
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道端にさへも鈴蘭北の町
久保田光江
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今日だけは江戸っ子となる初鰹
鈴木恵美子
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更衣ハイカラといふ褒め言葉
笹島美和子
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娘の指の気どりてつまむさくらんぼ
廣門登喜子
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雨の朝あぢさゐの精今日何処に
森崎 富貴
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ちちははに無かりし余生鮎の宿
吉田 新子
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紫陽花の白鮮やかな月夜かな
川部 義明
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短夜や夢結ぶ間もあらばこそ
佐々木 弘
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若鮎や微動だにせず老釣師
宇都宮義長
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鮎を釣る竿をすべりし日の光
仲島 信
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留守の間に大事な草も引かれをり
黒澤三主寿
竹の子会
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「ただいま」と守宮に声をかけ鍵を
苅野 玲子
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女王の威厳を乗せて夏の川
渡辺 幸江
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網戸越し猫のおもちゃの守宮かな
千葉ゆり子
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戸袋が守宮の住処ワンルーム
安達久美子
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山道の青葉青葉の中を行く
苅野 節子
わかみどり会
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西瓜売同じ縞柄シャツを着て
清水 悠子
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若衆の声をからして祭果つ
畑山 則子
ミモザ会
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わたくしの眼鏡どこやら昼寝覚
佐々木巴里
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滴りの留まることを許されず
三国 紀子
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かなかなや暮れゆく雲の珊瑚色
石橋万喜子
10月号
一般投句
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孫の住む北の空には鰯雲
池田 重子
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個室にてひがな付添ふこれも避暑
川喜田秀雄
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夏草を揺らし飛立つ雀五羽
富所 敬子
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紫煙ともならず咽びし新煙草
戸田 徳子
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みずいろにそまっているよなつのかぜ
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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白玉は幼き頃の母の味
安藤 虎雄
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海開いつもの海と思へども
小澤孝ん子
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パン一つ鳩と分け合ふ日永かな
半澤ハツ子
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白玉や白の浮きたつ塗りの椀
柴崎 英子
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ガラス器に笹を敷きたる夏料理
武井 康子
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白玉にひかれて暖簾くぐりけり
飯田久美子
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松葉牡丹めざめてけふのはじまりし
久保田光江
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目立たなく目立ちて松葉牡丹咲く
鈴木恵美子
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白玉を掬ひ思ひ出話また
笹島美和子
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踏み外しさうな歩板も避暑散歩
廣門登喜子
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添へられし家族の写真お中元
森崎 富貴
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甚平をまだ着たがらぬ夫であり
吉田 新子
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帰途急ぐ坂の上なる夕立雲
川部 義明
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中元として山門を入る野菜かな
宇都宮義長
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撫子や出舟見送る運河べり
仲島 信
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会ふことの絶えお中元届きけり
黒澤三主寿
竹の子会
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木洩れ日の中に浮んで夏館
苅野 玲子
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せせらぎの音病葉を乗せ走る
渡辺 幸江
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ブナ木立星が照らして夏館
葉ゆり子
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井戸水にあれこれ冷やし夏館
安達久美子
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木苺を探す今年も同じ場所
苅野 節子
わかみどり会
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色変へて星幾重にも揚花火
清水 悠子
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心太つい口に出て内緒ごと
畑山 則子
ミモザ会
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疎開地の山の懐かし蝉しぐれ
佐々木巴里
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木槿垣白がもっとも耀かに
三国 紀子
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新涼や海に日の入る朱の鳥居
石橋万喜子
11月号
一般投句
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けたたまし百舌の叫びに夕日おち
池田 重子
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門限の間は循環バスに避暑
川喜田秀雄
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夕焼がとてもきれいだ見てごらん
原 良
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畑仕事終るを待てり彼岸花
富所 敬子
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願ぎごとを発す間もなく星流る
戸田 徳子
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どんぐりがえかきのぼうしかぶってる
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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流れくるピアノの調べ星月夜
安藤 虎雄
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残暑続きオリンピックも続きをり
小澤孝ん子
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白玉や尖りし心和みけり
半澤ハツ子
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南国の夜の華やぐ星月夜
柴崎 英子
-
なつかしやままごとあそび赤のまま
武井 康子
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露天湯を照らす今宵の星月夜
飯田久美子
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白玉のつるりと抜けし匙の先
久保田光江
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立秋の朝焼雲をふちどりし
鈴木恵美子
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手かざしで塞いでもみる秋夕日
笹島美和子
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鈴虫に夜を盗られて仕舞ひけり
廣門登喜子
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お持たせの梅酒に心うちとけて
森崎 富貴
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爽やかや先のことなど案ずまじ
吉田 新子
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マンションの噂の消えて草の花
佐々木 弘
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虫時雨森の奥より押寄せ来
川部 義明
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露草や朝の散歩の足濡らす
宇都宮義長
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行商の背籠に揺れる桔梗かな
仲島 信
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街の灯を目ざして下る星月夜
黒澤三主寿
竹の子会
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夏萩を揺らす風あり山の家
苅野 玲子
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襲名の市川団子声涼し
渡辺 幸江
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ロンドンの声援暑き夜となり
千葉ゆり子
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憧れの祖母の香のある古扇
安達久美子
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胡弓の音つれて踊るや風の盆
苅野 節子
わかみどり会
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松手入小雨の中を休まずに
清水 悠子
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ちゃん付けで犬呼んでゐる花野中
畑山 則子
ミモザ会
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むら雲をよけて昇りぬ月今宵
佐々木巴里
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秋蝉の思ひあるかにつまづける
三国 紀子
-
水澄むや水切り石を子に拾ふ
石橋万喜子
12月号
一般投句
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龍雲寺はた本門寺へと秋のバス
川喜田秀雄
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空高く見上げるほどの金木犀
富所 敬子
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新米のきらめき災禍忘れまじ
戸田 徳子
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隅田川澄みてうつせる武蔵の塔
矢代アリサ
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あかとしろみんなしんけんうんどうかい
きりいのぞみ
向原喜楽会・不動会
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籠かつぎ虫売の声遠ざかる
安藤 虎雄
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うす雲をはをりて月のお出かけか
小澤孝ん子
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坪庭の小さな景色虫時雨
柴崎 英子
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満月をいづくに見るや子を思ふ
武井 康子
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門灯をともす一歩に鉦叩
飯田久美子
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神輿待つ提灯に灯が入りにけり
鈴木恵美子
-
船窓に陸の傾き今日の月
笹島美和子
-
朝露やぽつんと残る夫の杖
廣門登喜子
-
新しき家に荷を解く秋日和
森崎 富貴
-
昨日今日ひがな雨降りそぞろ寒
吉田 新子
-
短命な姉でありしよ彼岸花
佐々木 弘
-
紫の風に光りし桔梗かな
川部 義明
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充分に努め果たして秋簾
宇都宮義長
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日の落ちし運河風聞く虫の秋
仲島 信
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どこからとなく何時の間に萩の蝶
黒澤三主寿
竹の子会
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木洩れ日の揺れてとんぼも定まらず
苅野 玲子
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はらからの慕わしき日や秋海棠
渡辺 幸江
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待ち侘びて話とぎれる雨月かな
千葉ゆり子
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釣好きの父食卓は鯊ばかり
安達久美子
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闇深く独り居に聴く鉦叩
苅野 節子
わかみどり会
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念入りな肌の手入れも冬支度
清水 悠子
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誰か呼ぶ声に出て見る秋の虹
畑山 則子
ミモザ会
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七輪を知らぬ世代と秋刀魚焼く
佐々木巴里
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乱れ萩風に身動きまゝならず
三国 紀子
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ねんねこやいつからおぼえしひとみしり
石橋万喜子