医療情報
2009年03月号掲載記事
リスクとニーズに基いた胃がん検診
われわれは、厚生労働省の研究班として10年間、萎縮性胃炎のマーカーである血清ペプシノゲン値による胃がんスクリーニングに関する調査、研究を続けてまいりました。
この間に消化器内視鏡の進歩、普及が急速に進み、そしてピロリ菌感染が、胃がんの主たるリスクファクターであることがほぼ明らかになり、われわれは内視鏡による胃がんスクリーニングを前提とした、ヘリコバクターピロリIgG抗体と血清ペプシノゲンによるリスクマネージメントが、今後の胃がん検診のあるべき姿であるという結論に達しました。
ピロリ菌感染のない人からの胃がん発生は極めて少なく、ピロリ菌感染による胃粘膜の萎縮が進むにつれて、胃がん発生の危険度が増していきます。
さらに胃がんの危険度の低いピロリ菌感染のない人たちが、年代が下がるごとに増えています。
これらの事実から、これまでの全員一律のバリウム検診ではなく、胃がん危険度の高い人に対して重点的に内視鏡検診を行うべきであると、われわれは考えております。
昨年度、東京都目黒区において、区民へアンケートを行って、胃がん検診に対するニーズを調査いたしました。
- アンケート対象・方法
- 対象:平成16年から18年に、区の胃がん検診(エックス線法)を受診した男女1,478名
- 調査時期:平成19年6月、7月
- 回答数:918名(回答率62.1%)
- 年齢:40歳から69歳
- 方法:郵送によるアンケート調査(自記式)
目黒区のバリウム検診受診者から、60%以上の回答を得ることができ、その結果、胃がんになるリスクを踏まえた胃がん検診を希望されている方が多いことがわかりました。
この結果を踏まえ、目黒区ではヘリコバクターピロリIgG抗体と血清ペプシノゲンによる「胃がんリスク検診」を導入することになりました。